共産党の総選挙政策から

総選挙政策「政治の中身をかえるとき  ――「国民が主人公」の新しい日本をつくりますーー」(2008年9月25日 日本共産党) からの環境政策部分の抜粋

6、地球温暖化対策の深刻な遅れを克服し、「人にやさしく環境を大事にする社会」をめざす

 日本を議長国として7月に開かれた洞爺湖サミットでは、世界が注目していた先進国の中長期削減目標についてなんの決定もされず、温暖化の影響を憂えている人々の失望をかいました。

 ことしから京都議定書の第1約束期間に入り、2012年までに1990年比で、日本は温室効果ガス排出量の6%削減を達成するよう迫られています。来年12月にコペンハーゲン(デンマーク)で開かれる温暖化に関する国際会議では、2013年以降の新たな国際的取り組みを具体的に決定しなければなりません。

 ところが自公政権は、国際的な取り組みをリードできないどころか、京都議定書の目標さえ達成できるか危うい状況です。すでに京都議定書の目標を超過達成し、中長期の数値目標を決定しているEU諸国に比べ、明らかに後れを取ってしまいました。これは自公政権が、最大の温室効果ガス排出国でありながら京都議定書から無責任にも離脱したブッシュ米政権に追随するとともに、具体的な削減のための施策をとることを「統制経済」と呼んでそっぽを向く財界のいいなりになってきた結果です。

 日本共産党はこの3月に欧州調査団を派遣し、6月には温暖化の抑制にかんする日本共産党の見解を発表しました。そのなかで明らかにしたように、温暖化の被害が取り返しのつかないレベルになるのを避けるには、産業革命前にくらべて2度以内の気温上昇(現在までにすでに0・76度上昇)にとどめることがカギです。そのために以下のような施策の早急な実現をめざします。

(1)ただちに温室効果ガス削減の中長期目標を示し、取り組む姿勢を明らかにする

 国連のもとにある研究者の組織IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、2度以内の気温上昇に抑えるために、世界全体やとくに先進国の中長期の削減に関する試算を明らかにしています。日本に課せられた「先進国」としての国際的義務を果たすために、2012年までに温室効果ガスの90年比6%削減という、京都議定書での約束を実質的に達成するとともに、わが国として2020年までに30%削減することを明確にした中期目標を確立し、2050年までに80%削減するという長期目標をすえて、それにむけて着実に実現していくための通過点を明示すべきです。福田ビジョンのように90年比で7・7%も増加した2005年を基準にして、「2050年まで60~80%削減」の長期目標だけを出すのでは、内外の信頼は得られません。

(2)最大の排出源である産業界の削減のため、公的削減協定など実績のある施策を実施する

 日本の温室効果ガスの削減対策が言葉だけのものとなっているのは、総排出量の8割を占め、しかもわずか200程度の事業所で日本全体の排出量の50%に達するほど極端に排出が集中している産業界の削減について、もっぱら財界の“自主努力”まかせにしているからです。EU諸国ですでに実績を上げている施策によく学んで、政府と産業界の間で削減目標を明記した公的な削減協定を義務づける必要があります。企業の削減目標達成のための補助的手段として、「国内排出量取引制度」や、二酸化炭素の排出量などに着目した環境税を導入すべきです。

(3)原発優先から自然エネルギー重視に転換し、目標を拡大し促進の制度を整備する

 二酸化炭素の排出量の9割がエネルギーに由来し、エネルギー対策は温暖化抑制のかなめです。現在、自然エネルギーは1次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)にとどまっています。2020年までにその比率を15~20%に引き上げることを明記した「自然エネルギー開発・利用計画」を策定します。自然エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度を導入します。自然エネルギーから得られる電気やガス、木質ペレットなどの販売で、その地域には新たな収入が生まれ、地域経済対策としても有効です。自公政権は、原発を「温暖化対策の切り札」とし、長期的にも電力供給の約半分を原発でまかなおうとしています。事故や災害、データ捏造(ねつぞう)などによって、原発の停止があいついでいるように、原発は決して安定的な電源ではありません。事故や廃棄物による放射能汚染という環境破壊の危険も大きく、安全上も、技術的にも未確立な原発を優先にするエネルギー政策はやめるべきです。

(4)国の将来戦略に温暖化対策を位置づけ、政府の取り組みを義務付ける「気候保護法」(仮称)を制定する

 地球温暖化対策は、将来の日本社会のあり方を探求する総合的な戦略・政策の重要な一環に位置づけ、エネルギー・地域振興・雇用・福祉・交通・農業・税制など各分野の政策と有機的に結びつけて着実にすすめてゆくべきです。そのために、国の将来にかかわる総合的な戦略・政策のなかに地球温暖化対策をしっかり位置づけ、政府の取り組みを義務づける法律(気候保護法=仮称)を制定します。生産から流通、消費、廃棄までのすべての段階で、温室効果ガスを削減し、将来にわたって「持続可能な経済・社会」「人にやさしく環境を大事にする社会」を社会全体の努力でつくりあげるという視点から、「24時間社会」など大胆に見直すことが必要です。