地球温暖化抑止の国際協定である「京都議定書」が定めた温室効果ガス削減の「第一約束期間(2008年~12年)」が、今年スタートしました。国連のもと各国政府によって、2013年以降の新しい行動計画を来年末までにつくる国際的な検討作業もはじまりました。7月の洞爺湖サミットは、日本の対応が世界から問われる場となります。 地球環境の未来と人類の生存条件に関わるこの大問題に日本はどう立ち向かうべきか。日本共産党の基本的な見解を明らかにします。
地球温暖化抑止は、一刻の猶予も許されない人類的課題
「地球の温暖化は疑う余地がない」、「人類が排出してきた温暖化ガスの濃度の上昇が、気候変動の原因であることはほぼ確実である」、「気候変動の速さと規模によっては、突然のあるいは非可逆的現象が引き起こされる危険がある」――国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)による「第四次評価報告書」は、世界中の科学者の知見を結集して、深刻な結論を導き出しました。
地球規模の気候変動はすでにはじまっています。世界では、2003年に欧州を襲った熱波で3万5千人が亡くなり、大型化したハリケーンやサイクロンが世界各地で大きな犠牲と被害を引き起こしています。オーストラリアではこの2年間、記録的な干ばつで小麦の生産が激減し、世界的な穀物価格の高騰の原因の一つになっています。北極では海氷が夏季に大幅に縮小して完全に消滅しようとしており、各地の高山の氷河が融けはじめています。
日本でも、真夏日の増加、竜巻のひん発、台風や低気圧の強力化、記録的な集中豪雨の増加、高潮の被害などが日常の生活や安全を脅かしています。九州の稲が高温障害で実入りが悪くなったり、ミカンの生育不良、沖縄周辺でサンゴが死滅し、日本海などで大型クラゲの大量発生が起きるなど、農林水産業への影響もあらわれています。
<気温上昇を2度以内に抑えこむことが決定的に重要>
IPCC報告は、産業革命による工業化以前に比べて世界の平均気温が2度以上上昇すると、取り返しのつかない重大な変化が起きると予測しています。土壌からの二酸化炭素やメタンの発生が加速する一方、水温の上昇によって海の二酸化炭素の吸収量が減少し、急激で大幅な温度上昇が起き、二度と元に戻れない状況がもたらされます。
地球の平均気温は、産業革命以後200年余を経た現時点で0.76度上昇しています。それにくわえて、すでに大気中に排出されてしまった温室効果ガスの影響で、これからの20年間に気温がさらに0.2度上昇すると予測されています。そして、もしこのままなんの手もうたなければ、平均気温は今世紀末には最大で6.4度上昇すると予測されています。
危機的な事態が予測されるなかで、いま、地球温暖化の抑制に真剣に取り組むこと、とりわけ、産業革命前に比べて気温上昇を2度以内に抑えこむことに全力をそそがなければ、地球環境と人類の生存を脅かす破局の到来は避けられません。
IPCC報告書の作成にたずさわった日本の科学者たちが連名で公表した国民への緊急メッセージ(07年2月)は、「温暖化は、私たち市民の予想を遙かに超えるスピードで進行しつつある。……温室効果ガスの大幅な削減という大きな課題に向けて、直ちに行動を開始する必要がある」と訴えています。科学者のメッセージは明確であり、温暖化対策のタイムリミットは切迫しています。
<温暖化抑止に世界はどう立ち向かっているか>
IPCC報告書は、気温上昇を2度以内に抑えるためにつぎの3点がカギになると強調しています。
(1) 2050年までに、世界の温室効果ガスの総排出量を1990年比で半分以下に削減すること、とくに先進国は80%以上削減すること(長期削減目標)。
(2)2015年までのできるだけ早い時期に世界の総排出量を減少に転じさせること、とくに先進国は2020年までに25~40%削減すること(中期削減目標)。
(3) 以上の目標の達成によって、今世紀末までに人類が排出する二酸化炭素を1兆8000億トン以下に抑え、大気中の二酸化炭素濃度を安定させること。
地球温暖化抑止について世界がどう取り組むかを定めた気候変動枠組条約は、産業革命以来の地球温暖化の進行にそれぞれの国がどういう責任を負っているかに着目して、世界の国ぐにを、「過去及び現在における世界全体の温室効果ガスの排出量の最大の部分を占める……先進国」(35カ国)と、それ以外の「開発途上国」とに区分し、それぞれの役割・責務を明らかにしています。
地球温暖化の抑止という全人類的課題の解決に、地球上のすべての国・地域が全力をそそぐ必要があることはいうまでもありませんが、産業革命以来の経済活動を通じて地球温暖化に大きな責任を負う「先進国」と、「途上国」の違いを考慮に入れる必要があります。
事態の経過からいって、「先進国」は、地球温暖化の危機を生み出してきた歴史的責任を負うべき立場にあり、その点からいっても、「先進国」が地球温暖化に関する主要な責任を自覚し、それにふさわしい役割を果たすことが強くもとめられます。
もともと、経済発展の権利は世界のどの国・地域にも平等に保障されるべきものです。現在、歴史的事情から経済的に遅れた水準にある国は、どの国の国民も、経済面での遅れを克服して先進国並みの発展水準を達成する歴史的権利をもっています。その見地から、長い展望に立てば、人口1人あたりの温室効果ガスの排出量も平等になるようにすべきです(「炭素デモクラシー」)。現在の地球の現状のもとでは、これらの「途上国」も、その経済的発展の課題を、地球環境をまもるという世界共通の課題と結びつけて成しとげること、そのために、「先進国」が過去に歩んだ道とは違った経済発展の新しい形を開拓し、実現することが、人類的見地からの要請となっています。そのことは、気候変動枠組条約の「それぞれ(の国が)共通に有しているが差異のある責任」という表現で国際的に合意されています。
こうした国際的な枠組みにそって、いま、世界はどのように取り組んでいるでしょうか。
まず「先進国」です。EU(欧州連合)は、温暖化問題を、「いまだかつて見られなかった、非常に深刻で広範囲に及ぶ市場の失敗」(英国政府「スターン報告」)という共通の認識に立ち、「先進国」全体が責任をもつべき「待ったなし」の課題と位置づけて取り組んでいます。「京都議定書」によってEU(当時の加盟国15カ国)は、「第一約束期間」までに1990年比で8%削減することを義務づけられましたが、EUは、その参加国のなかでも経済発展が先行し人口も多い国が率先してより多くの割合で削減する対応策を取りました。イギリスは、12.5%の削減を目標に掲げ、2005年までにすでに目標を上回る15.7%を削減し、約束期間の終了(2012年)を待たずに2010年までに23.7%削減する見通しです。イギリスは現在、2020年には30%、2050年には60~80%削減する目標を明記した法案を審議中です。またドイツは、21%を約束期間中の削減目標とし、2005年で18.7%まで削減し、2010年には25.7%まで削減する計画です。さらに、2020年には40%削減、2050年には80%削減を目標としています。
こうした取り組みによって、EU全体を通じて2010年には目標を4割も上回って11.4%削減し、2020年までに30%削減する「中期目標」(EU以外の国が適切な削減に合意しない場合は20%)、2050年には60~80%削減する「長期目標」を掲げ、国際的な削減の枠組みでの合意をめざしています。
一方、「途上国」はどうでしょうか。「途上国」のなかでも急速に経済発展をつづけている国では、経済成長とともに温室効果ガスの排出量が急速に増加しています。これらの国の動向は、世界全体の温室効果ガスの排出量に影響をあたえるようになっていますが、「温室効果ガス排出の抑制に努め、地球的な気候変動の緩和に貢献していく」(中国)、「エネルギー部門で2025年までに17%削減する」(インドネシア)などの努力が開始されています。
また、温暖化の影響をもっとも深刻に受けるのが、小さな島国をはじめ、地球温暖化にほとんどなんの責任もなく、現在なお貧困に苦しみ、経済的にも弱い国ぐにであることを真剣に考慮しなければなりません。
「先進国」がみずからの責任を自覚し、削減の先頭に立つとともに、「途上国」に対して積極的な技術・資金の支援をおこなう ―― こうした「二重の責任」をはたすことは、「先進国」に課せられた当然の「歴史的責務」というべきです。
国際的責任を果たすためにも、わが国の政策の抜本的転換をもとめる
こうした世界の現状のなかで、わが国の取り組みはどうでしょうか。地球温暖化問題を主要な議題とする洞爺湖サミットで、議長国を務める日本の役割がきわめて重要であるにもかかわらず、わが国の取り組みは「先進国」のなかでも決定的に立ち遅れています。京都議定書で、温室効果ガスについて1990年比で6%削減する目標を掲げながら、逆に6.2%も増やしており、この人類的課題をはたす責任を投げ捨てるものとなっています。政府は、この姿勢に世界から強い批判が向けられていることに、目をふさぐべきではありません。
日本共産党は、わが国が実効ある地球温暖化対策を早急に確立し、それをただちに軌道に乗せて国際的責任を果たすよう、以下の方向と内容で温暖化政策を抜本的に転換することを強くもとめます。
1、先送りにせず、ただちに温室効果ガスを大幅に削減する中期目標を明確にする
政府は、京都議定書を採択して10年間も経過するのに、財界の「温室効果ガスの総量削減目標は経済統制だ」、「京都議定書は不平等条約だ」などという“恫喝”ともいうべき言い分をタテにとって、温室効果ガスの増加を放置しています。
ことし3月に政府が決定した「京都議定書目標達成計画」も、実質的な削減に本気で力をそそぐものではなく、科学的に実証されていない「森林吸収枠」(3.8%分)を目いっぱい計算に入れたり、削減枠に余裕のある外国から排出枠を買い入れて、それを自国の削減実績に組み入れるなど、“見せかけ”の上だけで「削減実績」をふくらませようというものです。肝心の実質的な削減目標は90年比でわずか0.6%にすぎません。
しかも政府は、今日にいたってもなお、国としての実質削減量を明らかにする中期目標の設定を先送りしつづけています。6月9日に発表した「福田ビジョン」でも、“2020年度までに2005年度比で14%削減なら可能だ”などと、「1990年を基準として削減量を割り出す」という国際的な約束ごとさえ無視し、中期目標の設定そのものを棚上げしてしまいました。これは“開き直り”としか言いようのない態度です。当面する2020年度目標を確定し、それを実行する責任を負わないものが、その先の目標だけをうんぬんしても、世界の誰からも信用されないことはあまりにも明白だからです。
わが国に課せられた「先進国」としての国際的義務をはたすために、「2050年まで80%削減」の長期目標を出すにとどまらず、それにむけて着実に実現していくための通過点を明示して、2012年までに90年比6%削減という、京都議定書での約束を実質的に達成するとともに、わが国として2020年までに30%削減することを明確にした中期目標の確立に踏み切ることをもとめます。
2、最大の排出源である産業界の実質的な削減を実現する
日本の温室効果ガスの削減対策が言葉だけのものとなっているのは、総排出量の8割を占める産業界の削減について、もっぱら財界の“自主努力”まかせにしているからです。ここには、日本政府の削減対策が真剣なものであるかどうか、その成否が問われる試金石があります。この分野で思い切った転換をおこなわないかぎり、地球温暖化抑制の事業において国際的責任にこたえる有効な貢献をはたすことは絶対にできません。
しかも、この産業界の排出は、特定の大口排出施設に極端に集中しています。製鉄所や火力発電所などわずか220事業所で日本全体の排出量の50%を占めます(環境NGO「気候ネットワーク」の調べ)。これら超大口排出事業所や大口排出業界での削減をすすめることが大幅削減実現のカギです。
実質的な削減を具体的にすすめるためには、“財界まかせ”の姿勢ときっぱり手を切り、なによりもまず、政府と経済界(または各業界・企業)のあいだで削減の期限と目標を明らかにした公的協定を結ぶことで、排出量の大部分を占める産業界の削減の見通しを明らかにすべきです。具体的には、次の諸政策の実行が急務となります。
<具体的な削減目標を掲げた公的協定を経済界に義務づける>
超大口排出施設をかかえる産業や企業については、政府との間で削減目標を明記した公的な削減協定を義務づける必要があります。政府が中・長期の削減目標を掲げ、この協定で個々の業界・企業の削減目標を明らかにすることによって、削減に具体的な道すじがつけられます。協定には、温室効果ガスの削減目標(温室効果ガス削減の総量、生産量あたりでの削減目標、エネルギー消費の全体量と生産量あたりの削減量)、短期・中期目標の実施期限、政府への報告義務、第三者機関によるモニタリング・検証などを盛り込むべきです。
<実質的な削減を加速する「国内排出量取引制度」を実施する>
「排出量取引制度」は、排出量が一定規模を上回る事業所ごとに、政府による審査を通じて削減目標を設定し、目標以上に削減した事業所はその分を売却でき、逆に目標が達成できない事業所は、ペナルティを避けるために、目標を達成したほかの事業所から「削減枠」を買い入れて未達成分を穴埋めできるという制度です。
2005年以来のEUの取り組みとその教訓を踏まえ、企業の削減目標達成のための補助的手段として、日本でもこの「国内排出量取引制度」を導入すべきです。そのさい、排出量削減のうち排出量取引でまかなう割合や、海外からの買い入れの割合に上限を設けることが必要です。また、投機によって市場が振り回される事態を避けるために、排出量の需給状況に関する情報公開を徹底し、実際の排出量の裏づけのない取引は規制すべきです。
<化石燃料の使用削減を促進するために環境税を導入する>
これまでは化石燃料を消費して温室効果のある二酸化炭素を大気に放出しても、なんのコスト負担もありませんでした。環境への悪影響を考慮し、二酸化炭素の排出量などに着目した環境税を導入することを検討すべきです。これによって、(1)環境負荷への「課徴金」的な負担をもとめ、産業や業務、家庭などでの省エネの推進や他のエネルギーへの代替をすすめる、(2)社会全体でエネルギーのむだをなくし、温室効果ガスの排出のより少ないシステムにあらためるなど構造全体の見直しにつなげる、(3)化石燃料と自然エネルギーの価格の差を相対的に縮める、(4)税収を温暖化対策の促進や課税の影響の緩和、その他、国民に必要な施策の財源にあてる―――などの効果が期待できます。
環境税は、石油・石炭・天然ガスなど化石燃料を燃やしたさいに生ずる二酸化炭素の量に応じて課税し、国の予算上、使い道を特定しない「一般財源」とします。主要な負担は、化石燃料の大半を使用している大企業・財界がになうのが当然です。低所得者、医療・福祉・教育施設、公共交通の燃料、中小・零細企業、食料自給に関わる農業・漁業、寒冷地などについて適切な負担免除・軽減措置をとるべきです。
3、エネルギー政策の重点を自然エネルギーの開発・利用へ転換する。
二酸化炭素の排出量の90%がエネルギーに由来することからみても、エネルギー対策は温暖化対策の要です。ところが政府は、化石燃料偏重から自然エネルギー重視に転換する明確な目標ももたず、自然エネルギーの利用拡大のカギとなる自然エネルギー発電に関する固定価格買い取り制度の導入を拒否しています。そればかりか、「福田ビジョン」では原発の新増設を今後のエネルギー対策の優先課題としています。日本にとって自然エネルギーの普及は、原油・石炭など輸入エネルギーの需要増・高騰がすすむもとで、経済基盤の安定のためにもエネルギー自給率の引き上げがもとめられているという点からも急務です。
化石燃料偏重・原発だのみから脱却し、自然エネルギー重視へと、エネルギー政策の抜本的転換が必要です。
<自然エネルギーの割合を2020年までに15~20%とする導入目標を明らかにする>
EUが2020年までに一次エネルギーの20%を自然エネルギーでまかなう目標を決定したのをはじめ、世界的に見ても、太陽光・熱、風力、小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの普及が本格的な流れになっています。こうしたなかで、日本だけが自然エネルギーの普及に背をむけ、一次エネルギーのわずか2%(大規模水力発電分3%を除く)をまかなうだけにとどまっています。2020年までに一次エネルギーに占める自然エネルギーの割合を15~20%に引き上げることを明記した「自然エネルギー開発・利用計画」を策定し、自然エネルギーの開発・利用に取り組むべきです。
自然エネルギーから得られる電気やガス、将来的には水素などを販売することで、その地域には新たな収入が生まれます。ドイツでは、自然エネルギーの普及によって年間1億トンの二酸化炭素を削減するとともに、21.4万人の雇用と年間3.7兆円の売り上げなど、雇用や技術、資金の流れを地元に生み出し、事業の成果や副産物を地元に還元しています。自然エネルギーの普及は、地域経済対策としても大きな転換となります。
<自然エネルギーによる電力を固定価格で買い取る制度を早急に導入する>
自然エネルギー発電の普及には、長期的な採算の見通しが重要であるため、電力の固定価格買い取り制度の導入がカギです。固定価格買い取り制度は、再生可能エネルギーの設備を導入した時点で、その設備から供給される電力の買い上げ価格を市場まかせにせず、一定期間(たとえば20年間など)保障する方式です。EUのなかでも固定価格買い取り制度が導入されたドイツ、デンマーク、スペインでは、自然エネルギーの普及が急速にすすみ、世界をリードしています。国が廃止(05年)した住宅用太陽電池パネルの設置補助金を復活させるとともに、固定価格による買い取り制度を実施するための財源には、原発に偏重した電源開発促進税(08年度=3480億円)の見直し分や環境税の税収などをあてます。
また、廃熱を熱供給に利用すること(コジェネレーション=電気・熱併給システム)で、エネルギーの利用率を40%程度から70%台まで引き上げることができます。小規模・分散型利用を促進する制度を整備し、コジェネレーションの導入を積極的に支援すべきです。
<温暖化対策を口実にした原発推進政策は危険であり、転換をもとめる>
政府は、原発を「温暖化対策の切り札」だとして、電力供給の約半分を原発でまかなおうとしています(経済産業省「長期エネルギー需給見通し」)。しかし、事故や災害、データ捏造などによって、原発の停止があいついでいるように、原発は決して安定的な電源ではありません。しかも原発事故とそれによる環境破壊の危険性は重大な問題であり、原子炉から出てくる放射性廃棄物も、その処理・処分方法が未確立なため、環境汚染の危険性を軽視できません。また原発などの地下に活断層があることも次つぎと確認や指摘がされ、政府、電力会社のこれまでの原発立地のあり方がきわめて無謀なものであったことも、実証されつつあります。さらに、こうした安易な原発依存の姿勢が、自然エネルギー開発を異常に立ち遅れさせた一因となってきたことも、忘れてはなりません。
このような危険な原発推進政策をやめ、技術的に未確立で、十分な安全性の保証がない原発からは、計画的に撤退すべきです。
国民の世論と行動で、持続可能な経済・社会をめざして踏み出す
いま、国民のなかで地球温暖化問題への関心が高まり、自分たちの生活を見直し、環境にやさしいライフスタイルに転換することによって、現在の地球と将来の子どもたちに対する責任をはたそうという声と取り組みが広がっています。各種の世論調査でも温暖化の被害を心配する世論は9割をこえ、照明やシャワーなどの節約、冷暖房の控えめな使用、レジ袋を減らすマイバッグの持参など、8~9割の人が何らかの形で努力しています。
<「大量生産・大量消費・大量廃棄」を大もとからただす>
こうした国民一人ひとりの努力を真に実らせるためには、大企業の利潤第一主義のもとで、国民生活に「大量生産・大量消費・大量廃棄」の風潮が意図的に持ちこまれてきたことを正面からとらえ、この風潮を大もとからただす仕事に本格的に取り組む必要があります。部品がなくて修理ができず次つぎに捨てられる家電製品、約2台で通常の家庭1世帯分のエネルギーを消費する自動販売機や、家庭の11倍の二酸化炭素を出すといわれるコンビニエンスストアの24時間営業、深夜の過剰なライトアップ、深夜労働や生産施設の24時間稼動という「労働のあり方」など、この問題はさまざまな面にあらわれています。
生産から流通、消費、廃棄までのすべての段階について、温室効果ガスを削減して地球温暖化をくいとめ、将来にわたって「持続可能な経済・社会」「人にやさしく環境を大事にする社会」を社会全体の努力でつくりあげるという視点から大胆に見直すことが求められます。国の将来に関わる総合的な戦略・政策のなかに地球温暖化対策をしっかり位置づけ、政府の取り組みを義務づける法律(気候保護法=仮称)を制定することも当然検討すべきです。
<「人にやさしく環境を大事にする社会」をつくる視点で経済と社会を見直す>
日本や世界の各地で地球温暖化問題に取り組む先進的な経験も生まれ、その先頭にはNGO(非政府組織)が立っています。こうした経験からさまざまな教訓を学び、それを広げ生かすネットワーク=共同の輪を広げることもますます大事になっています。温暖化抑止のために何ができるのか、地域・職場・学園など草の根のレベルで話し合い、知恵と力をあつめて行動をおこすことも大きな意義をもちます。
地球温暖化対策は、経済や社会、政治のすべてにおよぶ総合的な課題、将来の社会のあり方にもかかわる根本問題であり、それを確実に実行するには広範な社会的合意が不可欠です。EUでは、温暖化対策を経済・社会の「持続可能な発展戦略」のトップ課題に位置づけたうえ、実際の経済・社会政策も、「温暖化対策を通じた成長と雇用の促進パッケージ」というように、常に温暖化対策と関連づけてうちだしています。こうした取り組みの土台に、「利潤第一の考え方では温暖化は止められない。社会システムの根本的改革が必要だ」(ドイツ連邦議会・環境委員会副委員長の日本共産党欧州調査団への説明)という立場から取り組む考え方があることも、わが国の対策を考える上で学ぶべき大事な点です。
地球温暖化対策を、将来の日本社会のあり方を探求する総合的な戦略・政策の重要な一環に位置づけ、エネルギー・地域振興・雇用・福祉・交通・農業・税制・日本と世界の安定など各分野の政策をそれと有機的に結びつけて確立し、国民の合意を得ながら着実にすすめてゆくべきです。
日本共産党は、地球温暖化の進行を憂える内外のすべての人びとと力をあわせて、地球温暖化をくいとめ、将来にわたって「持続可能な経済・社会」「人にやさしく環境を大事にする社会」を実現するという人類的課題の推進に全力で取り組みます。