二〇一七年 一月二十五日午後八時詠む
寝屋川廃プラ・リサイクル公害を詠む(その①)
1 ぜん息の娘の発作の切なさに鶯の鳴く街に越し来ぬ
2 田をつぶし突如建ちゆく廃プラの処理工場に不安募り来
3 公民館に住民四百詰めかけて怒りの声挙ぐ市の説明に
4 自治会長我は署名を呼びかけり集めに集むひと月八万
5 三月の雨降る中をカラフルな傘一千のデモの列行く
6 操業が始まりたちまち街じゅうに異臭ただよい眼や喉痛し
7 泣きながらここには住めぬと母娘家財そのまま奈良市へ越しぬ
8 公害の立証責任被害者に負わせるこの国なんたることか
9 東京より手弁当にて駆けつけて教授ら突きとむ有害物質
10 疫学の調査結果は断定す「健康被害の集団発生」
11 ああこれはシックハウスの症状だ 検診終えし医師団の告ぐ
12 十二月の朝四時に起き元教授排ガスの流れを現地実験す
13 十人の弁護士たちは一日かけ住民の訴え書き留めくれたり
14 文学が裁判正す史実あり『松川歌集』復刻を決む
15 幾度の大法廷の公判に傍聴席のいつも溢れり
16 裁判長は「学者の意見書不採用」―さり気なく述べさっと隠れる
17 十年に四度の訴訟みな敗訴 健康被害癒えぬというに
18 こらえがたき思いに立ちし市長選 妻の得票四五%
19 廃プラの健康被害なくすまでたたかい続けんただひたすらに
20 夕方の雲の間に青み射しカラス鳴きゆく明日は冬晴れ