日本共産党第二十三回大会決議
環境にかかわる箇所を赤字とコメント
第五章 国民生活を守る諸闘争――たたかいによって暮らしを守るルールを
(15)自民党政治の経済政策の行き詰まりと破綻のもとで、いま国民の暮らしは未曽有の危機にさらされている。とくに小泉内閣の三年は、「構造改革」の名で、巨額の国民負担増の押しつけ、大企業のリストラ応援、中小企業つぶしが横行し、国民生活のあらゆる分野での荒廃と破壊が加速した三年半だった。政府の「国民生活に関する世論調査」でも、「生活の不安」を訴える人は67%と、史上空前となっている。
こうした現状を打開するために、わが党がどう立ち向かうか。二〇〇一年十月の三中総決定は、国政の場での政策的対応とともに、党が「たたかいの組織者」の役割を果たすことがとくに大切だとして、つぎのように提起した。「政府や大企業の陣営が、労働者や国民を犠牲にするどんな無謀な攻撃も平気で強行できる、これは明日の日本の社会のために、どうしても打開する必要がある現状であり、文字どおり二一世紀の日本社会が直面する最大の問題の一つがここにある」。三中総のこの提起は、日本社会のあり方そのものを大きく変える、長期的な構えにたったたたかいを呼びかけたものだった。
この方針をうけて、わが党は各分野の国民運動と共同してとりくみを強めてきた。
--無法なリストラにたいして、全国各地の職場で、「職場にルールを」をスローガンにかかげ、不当な解雇、転籍などとのたたかいが広がった。「サービス残業」をめぐるたたかいでは、政府に二度にわたって根絶のための具体的措置をとらせ、この約二年半の間に、二百五十億円をこえる不払い賃金を支払わせるなど、大きな前進の一歩を踏みだした。「青年に仕事を」の要求をかかげた署名運動が開始されるなど、若い世代のたたかいでも新たなうねりが起きつつある。
--大企業の一方的な工場閉鎖や、地域金融を担ってきた信用組合・信用金庫を無理やりつぶすなどの攻撃にたいして、党、労働組合、民主団体、自治体などが共同した、地域経済、地域金融を守るたたかいが広がった。地域ぐるみの運動によって、工場閉鎖計画を撤回させたり、雇用を確保させるなどの成果も生まれている。
--社会保障をめぐっては、健康保険自己負担を三割に引き上げる暴挙にたいして、医師会・歯科医師会・薬剤師会・看護協会などもふくめ、これまでになく幅広い国民的共同の運動が広がり、署名は三千万筆におよび、ひきつづき自己負担軽減という要求をかかげて発展している。
これらの前進は、初歩的な一歩である。同時に、これらは、深刻な生活危機のもとで、日本国民のなかに、たたかいに立ち上がる大きな潜在的エネルギーが蓄積し、広がっていることを示している。そして、このエネルギーに依拠してたたかいに立ち上がるなら、国民生活破壊の悪政が横行するもとでも、暮らしを守る一定の成果を現実にかちとりうることを示している。
(16)生活危機打開を願う国民の要求は、労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人・文化人、女性、青年、学生、高齢者など、それぞれの階層によって、きわめて多面的な広がりを持っている。また、都市と農村・地方、それぞれの地域ごとにも、生活をめぐる要求は、独特の特徴を持っている。国民の切実な要求の全体を視野に入れた、多様で壮大なたたかいを発展させる必要がある。
そのなかでも、自民党政治による生活破壊の攻撃とのたたかいの直面する焦点として、つぎの三つの課題での国民的運動を呼びかける。
--リストラに反対し、安定した雇用を拡大するたたかい……大企業のリストラ競争と、それを応援する政治のもとで、雇用をめぐる状況はかつてなく深刻である。失業が戦後最悪になっただけでなく、国民の所得が急激に減りはじめている。大企業は競いあって、正規雇用労働者を減らし、パート、アルバイト、派遣・契約社員などの不安定雇用におきかえる動きをすすめている。その一方で、過労死をまねく異常な長時間労働がさらにひどくなり、違法な「サービス残業」がはびこっている。若者の雇用問題は、とりわけ深刻な社会問題となっている。無法なリストラに反対し、「サービス残業」の根絶と長時間労働の是正、年休の完全取得をはかり、安定した雇用を拡大し、雇用と労働のルールを確立するためのたたかいの発展が、強く求められている。雇用の七割を支えている中小企業の経営基盤に踏み込んだ支援を拡充することを要求する。
--社会保障の連続改悪に反対し、安心できる社会保障制度を築くたたかい……毎年のようにくりかえされる社会保障予算の強引な削減は、連続的な負担増、給付減となって国民に襲いかかり、社会保障という本来なら暮らしの安心の支えとなるべき制度が、国民の生活不安の大きな根源となっている。とくに二〇〇四年度にも計画されている年金制度の大改悪に反対するたたかい、医療費のとめどもない負担増をやめさせ負担軽減を求めるたたかい、高すぎる保険料・利用料など介護保険の矛盾を改善するたたかいは、当面する焦点である。わが党は、税金の使い方をあらためる歳出の改革と、将来は、大企業・高額所得者に応分の負担を求める経済民主主義に立った歳入の改革をすすめることで安定した社会保障財源を確保する政策的展望を示しつつ、社会保障の連続改悪に反対するたたかいを発展させるために、力をつくす。
--消費税の大増税計画を打ち破る国民的闘争……消費税率を二ケタに引き上げる大合唱が始まっている。「二〇一四年度には16%に」(日本経団連)、「二〇二〇年度には19%に」(経済同友会)など、財界団体から増税を求める声がつぎつぎにあがり、政府税制調査会も中期答申で「二ケタ税率化」を明記した。二〇〇三年の総選挙では、自民党と民主党が、消費税増税を「政権公約」で公然と打ち出した。同年末には、自民党と公明党が二〇〇七年度をめどに消費税をふくむ「抜本的税制改革」をおこなうことで合意した。消費税大増税に向けた暴走が始まろうとしている。消費税は、税率10%なら総額二十五兆円、税率16%なら四十兆円もの恐るべき巨額の収奪となる。国民が黙っていたら、この方向が「既定事実」にされかねない状況である。
消費税は何よりも、所得の少ない人に重くのしかかる逆累進性を本質とする最悪の不公平税制である。税率引き上げは、逆累進性をいっそう深刻にし、ただでさえいちじるしく拡大しつつある貧富の格差に追い打ちをかけ、庶民生活と日本社会に荒廃をもたらすものである。
消費税は、税を価格に転嫁しきれず、身銭を切って納税している、多くの中小零細企業にとっては営業破壊税である。税率引き上げは、不況に苦しむ業者を倒産・経営困難に追いこむ深刻な事態をまねくものである。
さらに消費税が、景気破壊税であることは、九七年の消費税増税をはじめとする九兆円の負担増が、弱々しい足取りながらも回復を始めていた日本経済をどん底におとしいれた経験からも明らかである。長い不況に国民生活も日本経済も疲弊しきっているもとで、増税計画を持ち出すなど言語道断である。
「社会保障の財源のため」という増税の口実は成り立たない。消費税導入から十五年間の税収の累計は百三十六兆円にのぼるが、同じ時期に法人三税の税収は累計で百三十一兆円も減収している。消費税導入・増税とセットで、法人税減税がくりかえされてきた結果である。国民からしぼりとった消費税は、大企業への減税の財源としてのみ込まれてしまったのである。いまおこなわれている財界の提言でも、消費税の大増税が法人税のいっそうの減税や社会保険料の企業負担分の軽減とセットで打ち出されている。「社会保障の財源のため」でなく、「大企業の税・社会保険負担のいっそうの軽減のため」--ここに真実がある。
日本共産党は、天下の悪税--消費税の廃止をいっかんして求めている党である。同時に、いま暮らしも経済も破壊する消費税大増税が強行されようとしているもとで、それに反対する一点での広大な国民的共同とたたかいが急務である。わが党は日本列島津々浦々からこの運動を起こすことを、心から呼びかける。
(17)日本の食料と農業は、歴史的な危機に直面している。食料自給率は、低下をつづけ、家族経営の多くは存続すら危ぶまれている。農業の破壊は、国土・環境の保全や地域経済の維持にとっても深刻な影響を与えている。また、輸入食品の残留農薬問題やBSEなど「食の安全」が脅かされ、多くの消費者、国民が不安を強めている。産業政策のなかで、農業を基幹的な生産部門として位置づけ、その再建をはかり、食料自給率を計画的に向上させることは、緊急の国民的課題となっている。
日本では農業予算のうち、価格・所得保障にあてられているのは、わずか27%と三分の一にもみたず、欧米諸国で農業予算の五割から七割を価格・所得保障予算にあてているのと比べても、異常な少なさである。この根本には財界の農業つぶしの戦略がある。財界は、くりかえし農産物の価格保障の廃止を求める提言をおこない、家族経営をつぶして農業を大規模経営と株式会社にあけわたせと、圧力をかけつづけてきた。小泉政権は、全面的な食料・農産物の輸入依存を前提に、価格と需給安定にたいする国の責任を放棄し、「米政策改革大綱」では、一定の規模以上(都府県四ヘクタール以上、北海道十ヘクタール以上)の大規模経営農家と法人しか担い手として認めないというすでに破綻した政策をいっそう乱暴に押しつけ、圧倒的多数の家族経営をしめだそうとしている。このままでは、日本農業の崩壊が一気にすすむことになる。政府・財界の農業破壊政策とたたかい、価格・所得保障の抜本的拡充と家族経営がなりたつ農政への抜本的転換を強く求めてたたかう。
二〇〇三年九月にカンクン(メキシコ)で開かれたWTO(世界貿易機関)閣僚会議では、多国籍企業の利益優先で農産物貿易のいっそうの拡大を主張するアメリカなど輸出大国に対して、NGOや多くの発展途上国から反対の声が高まり、矛盾が深刻化している。世界的な食料不足が懸念されているもとで、農業の全分野を一律に貿易自由化の対象にするやり方をあらため、日本の米など各国の食料自給で中心的位置を占める農産物を輸入自由化の対象からはずし、各国の「食料主権」の確立をめざすことは、国際連帯の重要な課題になっている。
食料・農林漁業政策を根本から転換し、とめどもない輸入拡大を抑えると同時に、農産物の価格・所得保障を抜本的に充実させ、家族経営を支える農政の確立と食の安全を守るたたかいを前進させることが求められる。農村、都市を問わず、日本国民の存亡にかかわる問題として、国民的運動の発展のために力をつくす。
(18)日本における「ルールなき資本主義」といわれる現状は、長期にわたる自民党政治と日本独占資本主義の反動的支配が生み出したものだが、同時に、労働者、国民にたいする不当な攻撃がかけられたときに、それにたいする社会の側からの反撃のたたかいが弱いこととも、結びついたものであることを直視する必要がある。
欧州諸国では、一九八〇年代から九〇年代にかけて、保守的政権のもとで、「規制緩和万能論」が強まり、労働者のたたかいによってかちとってきた労働のルールを壊そうという逆流が強まった。それにたいして、フランス、ドイツ、イギリスなどで、数百万人という規模で労働者が参加したゼネストをはじめ、強力な反撃のたたかいが起こった。このたたかいは、個々の企業での賃上げや労働条件の改善をかちとるにとどまらず、解雇規制をはじめとする労働のルールを守り、前進させた。さらに、「企業の社会的責任」がEU全体の共通の認識となり、雇用や環境などの分野でそのための法令が整備されるとともに、情報公開の強化などをつうじて企業に自主的努力を促す方策がすすめられている。欧州では、無法な攻撃にたいする社会的大反撃の闘争のなかから、暮らしと労働を守るルールをつくりあげてきたのである。そしてこれらのルールが、欧州経済の安定性と強さの一定の基盤ともなっていることにも注目すべきである。
日本国民も、たたかいによってルールをかちとった歴史的経験を持っている。一九六〇年代から七〇年代にかけての国民のたたかいは、いまに生きる暮らしを守る重要なルールをかちとっている。七〇年代のオイルショックに便乗して一方的な整理解雇の攻撃が吹き荒れたさい、全国の労働者の強力な反撃がわきおこり、七〇年代後半に全国各地の裁判所の判決で「整理解雇の四要件」と呼ばれる一方的解雇を規制する判例体系が形成され、労働者の権利を守る重要なルールとして確立した。六〇年代後半から大きく発展した公害反対の住民運動は、「四大公害裁判訴訟」をへていっそう前進し、七〇年には「公害国会」を開かせ、公害対策を大企業を拘束しない範囲にとどめていた従来の公害対策基本法を改正させ、環境を守るルールの重要な前進がはかられた。世界に類をみない職場での異常な思想差別にたいして、長期の困難な闘争をたたかいぬき、東京電力、中部電力、関西電力など、すべての裁判で勝利をかちとり、こうした野蛮な思想差別を許さないルールを確立したことも、たたかいの成果である。女性の賃金差別を許さないたたかいも重要な前進をかちとった。
→環境問題は、単なる住民運動のひとつとしての課題か? 公害問題は、たしかに、ローカルな問題であった。住民運動の課題でローカルであった。
しかし、一九八〇年の「社公合意」路線と戦後第二の反動攻勢のもとで、日本の労働組合運動の右傾化の傾向が顕著になった。労働者の権利や生活向上の要求を抑え込もうという労資協調主義が横行した。こうして、勤労者の生活と権利を守る社会的たたかいの力を大きく弱める事態がつくりだされていることを、直視する必要がある。
当面の国民の切実な要求を実現するうえでも、民主連合政府とそれをになう統一戦線を実現するうえでも、この弱点を克服し、不当な攻撃には強力な社会的反撃をもってこたえる社会へと前進していくための、本腰を入れたとりくみが重要である。“たたかいによって暮らしを守るルールを”--この立場にたった大闘争が求められる。
(19)このとりくみのなかで、日本共産党が「たたかいの組織者」としての先駆的役割を発揮することがきわめて重要である。たたかいの旗印をかかげ、その大義を明らかにし、一歩でも二歩でも現実に成果をかちとり、大衆団体の運動と組織の強化のために努力をはらい、立場の違いをこえた広い人々との共同をつくりあげるなど、わが党の果たすべき責任はきわめて大きい。すべての職場支部、地域支部、学生支部、青年支部、党グループが、国民のたたかいのたのもしいよりどころとしての役割を果たすことが求められる。
とくに、たたかいの大義を明らかにし激励する、政策・理論活動を展開することは、わが党の重要な責務である。たとえば、無法なリストラに反対するたたかいの意義は、たんに労働者の生活と権利を守ることにとどまらない。リストラ競争は、国民所得をへらし、個々の企業の思惑をこえた経済の縮小をつくりだし、日本経済の長期停滞・衰退の一因となっている。コスト削減のための不安定雇用の拡大は、企業の生産性を低下させる事態を引き起こしている。雇用破壊が、社会保障の担い手を土台から弱め、医療や年金制度の深刻な空洞化をつくりだしている。こうした状況のもとで、無法なリストラに反対するたたかいは、日本経済、日本社会の持続的な発展にとっても国民的大義を持つ課題となっている。
国民にたたかいをあきらめさせ、そのエネルギーを眠り込ませる攻撃が強められているもとで、一つひとつのたたかいの課題について、それがどういう国民的大義を持っているのかを明らかにしていくことは、わが党が果たすべき重要な役割である。この役割を果たすうえで、今日のマスメディアの状況とのかかわりでも、「しんぶん赤旗」の存在と役割は、きわめて大きい。
(20)わが党は、国民運動の各分野で、多数者をめざす民主的な大衆運動の発展のために力をつくす。わけても労働組合運動が、労資協調主義の弱点を克服して発展することが重要である。
いま大企業の「リストラも賃下げも」という攻撃のもとで、戦後の伝統的な労資協調主義の理論であった、企業の生産性の向上に協力してこそ労働者の生活もよくなるという、いわゆる「パイの理論」が破綻し、労働組合の原点が根本から問われる新しい事態が生まれている。このもとで大企業側は、「労働者の生活と権利を守り、労働諸条件の改善をはかる」という労働組合の原点すら放棄させ、労働組合を企業の利潤追求と生産活動を補完する組織へと変質させようという動きを強めている。これは労働組合の文字どおりの自殺行為であり、広範な労働者との矛盾を激しくしている。端緒的であるが、ほんらいの労働組合のあり方をとりもどそうという動きも各地にあらわれつつある。いま日本にたたかう労働運動をとりもどしていく客観的条件は、おおいにある。
このなかで全労連が、階級的ナショナルセンターとして、労働者の切実な要求を実現するとともに、国民的要求を担って前進することが、強く期待される。たたかいをつうじて、未組織労働者や、不安定雇用の労働者のなかでの組織の拡大をすすめ、ナショナルセンターの違いをこえ一致する課題での共同をひきつづき探求することが重要である。
わが党の職場支部は、その企業で労働組合がどんな立場をとっていようと、労働組合が未確立の職場であろうと、労働者の利益を守り、たたかいを組織する拠点としての役割を担っている。この二十数年来の攻撃にたえて守り抜いてきた陣地は、きわめて重要な財産である。要求実現の活動をつうじて職場の労働者と広く深く結びつき、陣地を維持・拡大し、つぎの世代への継承を計画的・系統的にかちとるため、知恵と力をつくす。
国民要求を実現するための各分野でのたたかいを発展させる努力と結びつけて、統一戦線運動の前進をかちとる。今日の統一戦線の基本は、わが党と広大な無党派の人々との共同を広げることにある。わが党は、全国革新懇運動の地域、職場からいっそうの発展をかちとるために、力をそそぐものである。